負の連鎖

負の連鎖と生活保護制度受給者

 DVの被害を受けている「おかあさん」達のほとんどは、夫に経済力を奪われています。加害者は被害者を自分に依存させて支配しやすくするからです。また人づき合いを制限したり監視したりして、被害者を孤立させます。そしてたびかさなる暴力で「自分がつまらない人間だ」と思い込ませます。

 実際に「自分がつまらない人間だ」と思い込んで自信を失い、社会にでて働くのが困難な状況に陥っている女性が多いです。だから夫から逃亡したあとで生活保護制度の受給をうけるケースが多くなります。

暴力に命をうばわれてしまう人は沢山います。不幸です。

逃げることに成功しても体に障害を負ったり、心を病んで苦しんだりする女性達がいます。不幸です。

暴力の被害をうけた「おかあさん」達は夫から逃げるために必ず転居します。元の住所の知人や友人、場合によっては親族とのパイプも切らなければならないことがあります。加害者が襲撃してくる危険からお互いを守るために必要だからです。せっぱつまった状態で脱出するので着替えもないかたも中にはおられます。経済的な問題もかかえています。

 また、DV家庭で育ったお子さん達は学力が遅れることが多いです。毎日恐怖と緊張に支配されていたので、勉強が頭に入らなかったからです。「おかあさん」達はゆとりがなくて、お子さんの勉強を指導したり学習塾に通わせたりすることが困難です。それに他の「おかあさん」達に対して劣等感をもちやすく、新しい対人関係を築くのが苦手なかたが多いです。「おかあさん」に「ママ友」ができないとお子さん達の社会性にも問題がおこります。「お誕生会」に招待してもらえないとか、仲間にいれてもらえないなどの事がおきるからです。すると学校が楽しくありません。しかも授業が解らなかったらどうでしょう。

 ウチに帰っても「おかあさん」は元気がなく、クラスメートは楽しそうに笑っているけど、自分はつまらない。

 ウチには「おとうさん」がいない。「おとうさん」は怖かった。このお子さん達を放っておいて健やかな成長されるでしょうか?

 「生活保護受給者の子供は生活保護」というジンクスがあります。心が満たされないお子さんは心が未成熟な大人になりやすく、人間関係が困難で社会活動が苦手になりやすいからです。

 

 親がマイナスに落ち込むと子孫もマイナスにまき込まれやすくなり、生活保護受給世帯は増加して国や自治体の財政を圧迫する事になります。貧困は心を蝕むので一度生活保護を受けた人は再就職率が低くなります。

 

 家庭内暴力や虐待は増え続けています。負の連鎖は不幸です。

 

 傷ついた「おかあさん」達が「自分には価値がある」と自信をとりもどせるような地道なサポートの継続が必要です。

 もし「おかあさん」達が生き生きと暮らすようになったら、お子さん達は大人になった時に幸せな社会人となります。素晴らしい事です。

コ ラ ム